更新業務は、繁忙期より静かに殺しにくる
退去が出れば、すぐ動きます。原状回復、募集、内見。締切がはっきりしていて、放置すると空室期間が延びる。だから優先されます。
更新はそうなりません。期限が来ても、部屋は空きません。入居者はそのまま住み続けます。誰も困らない。
この「誰も困らない」が、更新業務の厄介なところです。
遅れたことに気づかない仕組み
更新の通知は、契約満了の数か月前に出すのが一般的です。ここから逆算して動きます。
ただ、契約の満了日は入居ごとにバラバラです。物件全体で一斉に来るわけではなく、毎月何件かずつ発生する。このバラつきが、業務としての存在感を薄くします。
月に3件なら、忙しい日に後回しにできてしまう。翌週になっても、まだ間に合う。そうやって少しずつ後ろにずれていって、気がつくと満了日を過ぎている。
過ぎても、何も起きません。入居者から「更新の連絡がまだですが」と言われることは、まずない。むしろ言われないほうが普通です。
法定更新になると、条件が変わる
放置した結果として起きるのが、法定更新です。
更新の合意がないまま期間が満了すると、契約は従前と同じ条件で継続します。ただし、期間の定めのない契約になります。この状態になると、次からは「更新」という区切りがなくなる。
実務上、ここで効いてくるのが更新料です。期間の定めのない契約になった以上、次の更新時期というものが存在しないので、更新料を請求する根拠が薄くなります。契約書に特約があっても、争いになりやすい。
つまり、うっかり放置した結果として、本来入るはずだった収入が入らなくなる。しかも、それが起きたことに誰も気づかないまま次の年を迎える。
気づけない理由は、記録の持ち方にある
この問題は、注意力では解決しません。
契約書をファイルで持っていて、満了日がそれぞれの書類の中にしか書かれていない状態だと、全体を見渡せません。誰かが定期的に全部の契約を開いて、満了日を確認する作業をしない限り、期限は見えてこない。
エクセルで一覧にしている会社も多いと思います。それでも、更新した後に台帳を直し忘れると、次の周期でずれます。前に物件管理をエクセルで続ける限界でも触れましたが、この手のずれは入力の手間ではなく、更新のたびに二重で管理していることから生まれます。
契約の満了日が、契約データそのものから引ける状態になっていれば、この作業は不要になります。今月満了を迎える契約を抽出する、というだけの話です。Roomlyのような管理システムで契約が登録されていれば、期限の一覧は常に出せます。
更新は、条件を見直せる数少ない機会でもある
後ろ向きな話ばかりではなく、更新には積極的な意味もあります。
入居中の条件を変えられるタイミングは、そう多くありません。家賃の見直し、設備の追加、契約条項の修正。どれも、更新のときが最も自然に切り出せます。
家賃を上げる交渉を考えている物件があるなら、更新時期から逆算して準備することになります。満了日の直前に思い立っても、根拠を整える時間がありません。
つまり、更新を単なる事務手続きとして流している会社は、条件を見直す機会も一緒に流していることになります。
10月に確認しておくこと
年末から年度末にかけて、更新の件数は増えます。年度の切り替わりで入居した人が多いためです。
いま確認できるのは、次の3か月に満了を迎える契約が何件あるかです。それがわかれば、通知を出す時期を逆算できる。件数が多ければ、処理する順番も決められる。
そして、すでに満了日を過ぎている契約がないかも見ておく。あった場合、そのまま放置するか、あらためて条件を整理するかの判断が要ります。気づいた時点で選べますが、気づかなければ選ぶこともできません。