アパート・マンションオーナーの火災保険|補償内容と相場の目安
賃貸物件のオーナーが入る火災保険は、入居者が入る保険とは守る対象が違います。建物そのもの、賠償責任、止まった家賃。何にどう備えるのかを補償内容と相場の目安から整理します。
オーナーの保険と入居者の保険は守る対象が違う
賃貸物件には、火災保険が二本立てで存在します。
ひとつはオーナー(建物所有者)が入る保険。もうひとつは入居者が入る保険。同じ「火災保険」という名前でも、守る対象がまったく別物です。
| 加入者 | 守る対象 | 主な補償 |
|---|---|---|
| オーナー | 建物本体 | 建物の火災・自然災害・水濡れ、施設賠償責任、家賃の損失 |
| 入居者 | 自分の家財 | 家財の損害、借家人賠償責任、個人賠償責任 |
入居者が入る家財保険は、テレビや家具といった「自分の持ち物」を守るもの。建物そのものは守りません。
逆にオーナーの保険は建物を守りますが、部屋の中にある入居者の私物までは面倒を見ません。この線引きを曖昧にしたまま「うちは保険に入っているから大丈夫」と思っていると、いざというとき補償の対象外だったという食い違いが起きます。
オーナーが入る火災保険の補償内容
オーナー向けの火災保険は、建物の補償を土台に、賃貸経営ならではの特約を重ねていく構成です。
建物の損害
火災・落雷・破裂爆発に加え、台風や大雪などの風災・雪災、給排水設備の事故による水濡れなどが対象になります。基本となる部分です。
水災
近年もっとも扱いが変わったのがこの水災です。洪水・高潮・土砂崩れによる浸水などが対象。後述しますが、立地のリスクに応じて保険料が細かく分かれるようになりました。
施設賠償責任(建物管理賠償責任)
建物の管理の不備が原因で第三者にケガをさせたり、物を壊したりした場合の賠償をカバーします。
たとえば外壁タイルの落下で通行人がケガをした、共用階段の手すりが外れて転倒した、といったケース。建物を所有・管理する立場には、こうした賠償リスクが常について回ります。特約として付けるのが一般的です。
家賃補償(家賃収入特約)
火災などで建物が損害を受け、修繕の間その部屋を貸せなくなったときに、得られなくなった家賃を補償します。
建物は直っても、空いている間の家賃はゼロ。ローン返済が続くオーナーにとって、この「収入が止まる期間」をどう埋めるかは建物の修理費と同じくらい切実です。
家主費用特約
入居者の死亡事故(孤独死など)が起きた際の、原状回復費用や、その後の空室・値引きによる損失などを補償します。賃貸経営特有のリスクに対応する特約です。
地震保険
地震・噴火、これらによる津波を原因とする火災や損壊は、通常の火災保険では補償されません。備えるには地震保険を付帯する必要があります。
地震保険は火災保険とセットでしか加入できず、補償額も建物の火災保険金額の30〜50%の範囲という上限があります。地震が多い日本で建物を持つ以上、付帯するかどうかは早めに判断したいところです。
保険料の相場の目安
保険料は物件によって大きく幅が出るため、固定の金額で語れません。同じ広さの建物でも、何で・どこに建っているか・いつ建てたかで変わります。
主に効く要素は次の3つです。
| 要素 | 保険料への影響 |
|---|---|
| 構造 | 木造(H構造)は鉄筋コンクリート(M・T構造)より高くなりやすい |
| 所在地 | 自然災害リスク、とくに水災リスクの高い地域は高くなりやすい |
| 築年数・補償範囲 | 築古や、特約・地震保険を多く付けるほど上がる |
そのうえで、おおまかな目安として、特約を絞った基本的な構成なら年間5万〜15万円程度が一つの目安とされます。ここに施設賠償責任・家賃補償・家主費用・地震保険などをフルに重ねると、年間で数十万円規模になる例もあります。
数字の幅が大きいのは、構造・立地・補償の組み合わせ次第で本当に変わるからです。自分の物件の見積もりは、条件を入れて取らないと出てきません。「相場」はあくまで桁感をつかむための目安として捉えるのが現実的です。
火災保険は値上げが続いている
ここ数年、火災保険料は上昇基調が続いています。背景にあるのが、損害保険料率算出機構が算出する「参考純率」の改定です。
参考純率は、各保険会社が保険料を決める際の目安となる数値。これが2023年6月の改定で、住宅向け火災保険について全国平均13.0%の引上げとなりました。この内容が各社の保険料に反映され、多くの会社で2024年10月以降の値上げにつながっています。
相次ぐ自然災害による保険金支払いの増加、建築資材費や工事費の上昇などが理由です。
あわせて、水災の保険料率がリスクに応じて5区分に細分化されました。これまで全国一律に近かった水災料率が、市区町村単位の浸水・土砂災害リスクを反映する形に変わったということです。水災リスクの低い地域では負担が軽くなる一方、リスクの高い地域は重くなる方向に働きます。
もうひとつ実務で意識したいのが、いわゆる「2025年問題」です。火災保険にはかつて最長10年の契約がありました。2015年に10年契約で入った物件が、ちょうど満期を迎えて更新の時期に入っています。更新時には新しい(値上がりした)料率が適用されるため、更新のタイミングで保険料が大きく跳ね上がるケースが出ています。
入居者の家財保険・借家人賠償責任との関係
オーナーが押さえておきたいのが、入居者側の保険、とくに「借家人賠償責任」です。
入居者が自分の不注意で火事を起こし、借りている部屋を焼いてしまった。この場合、入居者は大家に対して原状回復の責任を負います。その賠償を担うのが、家財保険に付帯する借家人賠償責任特約です。
| 特約 | 守る相手 | 典型例 |
|---|---|---|
| 借家人賠償責任 | 貸主(オーナー) | 入居者の失火で借りている部屋を損傷 |
| 個人賠償責任 | 第三者 | 水漏れで階下の住人に損害を与えた |
入居者がこの特約に入っていないと、いざ入居者の過失で建物が傷んでも、回収が難しくなる場面が出てきます。だからこそ、入居条件として家財保険(借家人賠償責任付き)への加入を求めるオーナーが多いわけです。
逆に言えば、入居者の保険でカバーされる部分はオーナーの保険で二重に備える必要はありません。両者の補償の境目を把握しておくと、過不足のない設計ができます。
加入・見直しのタイミング
火災保険は、一度入ったら放置になりがちな契約です。けれど見直すべき節目はいくつかあります。
- 契約の満期・更新時:料率改定の影響をもっとも受ける場面。長期契約だった物件ほど、更新で保険料が大きく変わる
- 建物の取得・建て替え・大規模修繕の後:建物の評価額や構造が変われば、適正な保険金額も変わる
- 自然災害が増えていると感じたとき:水災の補償の有無、地震保険の付帯を見直す
- 空室や入居者の入れ替えが多い時期:家賃補償や家主費用特約の必要性を再検討する
とくに水災補償は、料率が細分化された今、「自分の物件の立地で本当に必要か・足りているか」を一度確認する価値があります。ハザードマップ上のリスクと、実際に付けている補償がずれていることは珍しくありません。
保険は、入った瞬間がいちばん内容を覚えている時期で、そこから記憶が薄れていきます。満期通知が来てから慌てて中身を確認する前に、補償の境目と更新時期だけでも手元で見える状態にしておくと、判断が楽になります。
Roomlyでは、物件ごとの契約・火災保険の満期日を管理データに紐付けて管理でき、更新期日が近づいた物件を一覧で把握できます。