退去精算書の作り方|原状回復費用の内訳とテンプレート
退去精算でもめない明細書の作り方
退去精算は、賃貸管理の中で最もトラブルになりやすい業務の一つです。国民生活センターによると、賃貸住宅に関する相談のうち「退去時の原状回復」に関するものは毎年上位を占めています。
トラブルの多くは「何にいくらかかるのか分からない」「なぜ入居者負担なのか説明がない」という不透明さから生まれます。精算書の記載内容を明確にするだけで、退去時のトラブルは大幅に減らせます。
原状回復費用の具体的な計算方法については「原状回復ガイドラインの計算方法」で詳しく解説しています。
退去精算書に記載すべき項目
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 物件名・部屋番号 | 対象物件の特定 |
| 入居者名 | 契約者名 |
| 入居日・退去日 | 居住期間の確認 |
| 契約期間 | 賃貸借契約の期間 |
| 敷金預り金額 | 契約時に預かった敷金の額 |
原状回復費用の内訳
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 箇所 | クロス(リビング南面)、床(洋室)など具体的に |
| 損耗の内容 | タバコのヤニ汚れ、ペットによる引っかき傷など |
| 負担区分 | 貸主負担 or 借主負担(根拠を明記) |
| 単価×数量 | クロス張替え ¥1,200/㎡ × 15㎡ = ¥18,000 |
| 経過年数による減額 | 6年以上居住の場合は残存価値1円 |
精算金額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原状回復費用(借主負担分) | 上記内訳の借主負担合計 |
| 未払い家賃・日割り精算 | 月途中退去時の日割り計算 |
| ハウスクリーニング費用 | 特約がある場合 |
| 敷金預り金 | 契約時の預り金額 |
| 差引精算額 | 敷金 − 借主負担額 = 返還額(またはマイナスなら追加請求額) |
国交省ガイドラインに沿った負担区分の考え方
原状回復費用の負担区分を決める際の基本原則は、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に示されています。
貸主負担になるもの(通常損耗・経年変化)
- 壁紙の日焼け・変色
- 家具の設置によるカーペットのへこみ
- 画鋲やピン程度の穴
- テレビ・冷蔵庫の後ろの黒ずみ(電気ヤケ)
- 網入りガラスの熱割れ
- 鍵の取替え(入居者の過失がない場合)
借主負担になるもの(故意・過失・善管注意義務違反)
- タバコのヤニ・臭い
- ペットによる柱・壁の傷
- 引っ越し作業で付けた傷
- 結露を放置したことによるカビ・シミ
- 釘穴・ネジ穴(下地ボードまで達するもの)
- 油汚れの放置(キッチン)
経過年数による減額
入居年数が長いほど、設備の残存価値は下がります。国交省ガイドラインでは、以下の耐用年数を基準に借主の負担割合を減額するよう示しています。
| 設備 | 耐用年数 |
|---|---|
| クロス(壁紙) | 6年 |
| カーペット | 6年 |
| クッションフロア | 6年 |
| エアコン | 6年 |
| 畳表替え | 消耗品扱い |
| フローリング | 建物耐用年数に準ずる |
例:クロスの場合、入居6年以上であれば残存価値は1円。仮にタバコのヤニ汚れで全面張替えが必要でも、借主の負担は1円ということになります。
テンプレート例
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退去精算書
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物件名:○○マンション ○○○号室
入居者名:○○ ○○ 様
入居日:○○○○年○月○日
退去日:○○○○年○月○日
居住期間:○年○ヶ月
━━━ 敷金 ━━━
敷金預り金:¥○○○,○○○
━━━ 原状回復費用 ━━━
┌───────┬──────────┬────┬──────┬──────┐
│ 箇所 │ 損耗内容 │ 負担 │ 金額 │ 備考 │
├───────┼──────────┼────┼──────┼──────┤
│ クロス │ タバコヤニ汚れ │ 借主 │ ¥1 │ 6年以上 │
│ (リビング)│ │ │ │ 残存1円 │
│ 床 │ ペット引っかき │ 借主 │ ¥35,000│ CF張替 │
│ (洋室) │ │ │ │ │
│ 壁(日焼け)│ 経年変化 │ 貸主 │ ¥0 │ 通常損耗 │
├───────┼──────────┼────┼──────┼──────┤
│ 小計 │ │ │ ¥35,001│ │
└───────┴──────────┴────┴──────┴──────┘
ハウスクリーニング費用(特約):¥38,500
日割り家賃精算(○日分):¥○○,○○○
━━━ 精算 ━━━
敷金預り金:¥○○○,○○○
借主負担合計:¥○○,○○○
───────────────
返還額:¥○○,○○○
返還先口座:○○銀行 ○○支店 普通 ○○○○○○○
返還予定日:○○○○年○月○日
退去精算でトラブルを防ぐためのポイント
入居時の現況記録を残す
退去時に「この傷は最初からあった」「なかった」の水掛け論になるケースは非常に多いです。入居時に部屋の状態を写真付きで記録し、入居者と管理会社の双方で確認書を取り交わしておくことが最も有効な予防策です。
退去立会いで合意を得る
精算書を後日郵送するだけでなく、退去立会いの場で損耗箇所を一緒に確認し、負担区分の考え方を説明します。その場で合意が得られれば、後からのクレームは大幅に減ります。
特約の有効性を確認する
ハウスクリーニング費用の借主負担特約は有効ですが、金額が明記されていない、説明が不十分、入居者に不利すぎる場合は無効とされることがあります。契約時に特約の内容と金額を明確に説明しておくことが重要です。
まとめ
退去精算のトラブルは、ほとんどが「情報の不透明さ」から生まれます。何に・いくら・なぜ負担するのかを、根拠とともに明確に記載した精算書を作ることで、入居者の納得感は大きく変わります。
精算書のフォーマットを標準化し、入居時の現況記録と退去立会いの運用を整えることが、退去トラブルを減らすための最短ルートです。