読まれないオーナー報告書が、解約の伏線になる
毎月、決まった日に収支報告を送っている。数字は正確で、明細も揃っている。滞りなく続けている。
それでも、オーナーから「最近どうなってますか」と聞かれることがあります。
送っているのに聞かれるということは、読まれていないということです。
変化のない報告は、読む理由がない
報告書が読まれない理由は、内容が悪いからとは限りません。
毎月同じだからです。満室で、入金も予定通りで、特に何も起きていない。そういう月の報告書は、先月とほぼ同じ数字が並びます。
人は、同じものを何度も読みません。2回目か3回目で、開かずに「まあ大丈夫だろう」と判断するようになります。そして開かないことが習慣になると、何かが起きた月の報告書も開かれません。
つまり、順調な月の報告が、非常時の報告を届かなくしている。
数字だけでは、状況が伝わらない
もうひとつの問題は、報告書に載っているのが結果だけだということです。
入金額、経費、送金額。これは起きたことの記録です。オーナーが知りたいのは、多くの場合その先にあります。
来月はどうなりそうなのか。何か手を打つ必要があるのか。放っておいていい状態なのか。
数字の一覧からこれを読み取るには、賃貸経営の知識と、その物件の文脈がいります。オーナーによっては、それを持っていません。相続で引き継いだ人、本業が別にある人、遠方に住んでいる人。数字を見ても、良いのか悪いのか判断できない。
判断できない資料は、読んでも意味がないので、読まれなくなります。
一行あるかないかで変わる
解決策として大きな仕組みを作る必要はないと思います。
数字の前か後ろに、一行か二行、状況を言葉で書く。それだけで読み方が変わります。
「今月は変わりなし。101号室の契約が3月に満了します」 「空室が1件出ました。11月中の成約を見込んでいます」 「修繕費が先月より増えていますが、給湯器の交換によるものです」
書いてあるのは、数字を見ればわかることです。でも、数字から読み取る作業を相手にさせないという点で、意味が違います。
そして、この一行があると「何も起きていない月」と「何か起きた月」が区別できるようになります。区別できれば、読む理由が生まれる。
遠いオーナーほど、情報がすべてになる
以前オーナーに会わない管理会社の方が、解約されにくいという話を書きましたが、会わないこと自体は問題ではありません。
問題は、会わないうえに情報も届いていない状態です。この状態のオーナーにとって、自分の物件は見えないものになります。見えないものについて不安が出たとき、確認する先は管理会社しかない。そこで即答がなければ、不信が始まります。
逆に、毎月の報告で状況が見えていれば、会わなくても関係は保てます。むしろ、報告で足りているから会う必要がない、という状態のほうが健全かもしれません。
作る側の手間を増やさない
とはいえ、物件ごとに毎月コメントを書くのは負担です。管理戸数が増えるほど現実的でなくなります。
だから、書くのは「先月と違うこと」だけでいいと思います。変化がない月は「変わりありません」の一行で足りる。書くことがない月に無理に書くほうが、かえって読まれなくなります。
数字の部分は自動で出るようにして、人が書くのは変化の説明だけにする。Roomlyのような管理システムで入金や経費が記録されていれば、明細の作成自体には手をかけずに済みます。空いた時間を、一行のコメントに回すほうが効く。
報告は、解約を止めるためのものではない
report を整えれば解約されない、という話ではありません。
ただ、解約を切り出されるとき、直前に何か大きな失敗があったとは限らない。「よくわからない状態が続いていた」が積み重なった結果であることのほうが多いと思います。
その積み重ねを止められる場所が、毎月の報告です。読まれていない報告書は、積み重ねを止めていません。