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敷金トラブルの9割は「入居時」に原因がある

敷金トラブル原状回復入居時管理退去立会い自主管理

退去時に30万円を泣き寝入りした大家の話

壁の一面が黒ずんでいた。カビのような、タバコのような。でも入居時に写真を撮っていなかった。

「これは借りたときからこうだった」と退去者は言う。大家に反論する材料はない。専門業者に見せたら「全面クロス張替え、費用25万円」。さらに床の傷でも揉めて、最終的に30万円近い請求が宙に浮いたまま、小額訴訟の手間を考えて泣き寝入りした——自主管理の大家に話を聞くと、こういったケースは珍しくありません。

「入居者がひどい」と言いたくなる気持ちは分かります。でも振り返ると、問題の芽は退去時ではなく、入居時にすでにあった

建設現場は「着工前写真」を当然のように撮る

建設・土木の現場では、工事を始める前に「着工前写真」を撮るのが義務に近い慣行です。「工事前の状態」を記録しておかないと、「この傷は工事前からあった」「工事業者が壊した」というトラブルが後になってから起きるからです。

高速道路の修繕工事でも、マンションの大規模修繕でも、着工前写真は紛争防止の最も基本的な手段として定着しています。

賃貸の入居管理も同じです。

「この傷は入居前からあった」「クロスの汚れは最初からだった」——この「言った言わない」をなくすには、入居前の状態を記録しておくしかない。建設現場が100年かけて学んできた教訓を、賃貸の入居管理に当てはめるだけです。

写真1枚が証拠になる

入居立会い時に写真を撮る大家は増えています。でも実際の現場を聞くと、「撮ってはいるけど、場所がバラバラ」「入居者と一緒に確認していない」というケースが多い。

写真の撮り方にポイントがあります。

部屋全体を対角から撮る——床・壁・天井が一枚に収まるよう、部屋の隅から対角線方向に撮る。「この部屋の全体像」が記録される。

傷・汚れのある箇所は寄りで撮る——既存の傷やシミは、場所が特定できるよう近くで撮る。「どの壁の、どの位置にあったか」が分かる距離感で。

日付が入るようにする——スマートフォンのカメラは自動でメタデータに日付が入るので、それで十分。プリントする場合は日付印字を有効にする。

設備機器の状態も撮る——エアコン、給湯器、換気扇、水回り。「最初から動いていた」の証明になる。

写真は撮ったら即クラウドにバックアップする。スマートフォンのカメラロールだけでは、機種変更時に消える可能性があります。

チェックシートを渡すだけで揉め方が変わる

「入居前チェックシート」は複雑なものである必要はありません。

部屋の各箇所(壁、床、建具、水回り、設備機器など)を列挙して、「異常なし / 傷あり / 汚れあり」を記録する欄があればいい。入居者に渡して、「気になる箇所があれば入居後1週間以内に記入して返送してください」と伝える。

このシートには二つの効果があります。

一つ目は、入居者自身が「既存の問題」を報告してくれる効果。入居者は入居前の状態を正確に知っている。大家が見落としていた傷や、引き渡し前の清掃で落としきれなかった汚れを教えてくれることがあります。

二つ目は、退去時の「言った言わない」をなくす効果。チェックシートで「異常なし」として返送されていれば、退去時に「これは最初からあった」という主張が通りにくくなる。逆に「傷あり」と記録されていれば、その傷は入居前から存在していたことが書面で確認できます。

チェックシートは入居者を「疑う」ためではなく、入居者を「記録の共同作業者にする」ための道具です。

「一緒に確認する」ことの意外な効果

入居時に大家と入居者が一緒に部屋を回って状態を確認する。この「立会い」には、記録以外の効果があります。

入居者が「この部屋のことを分かっている人がいる」と感じる——「自分だけが知っている」状態と、「大家さんも一緒に見た」状態では、退去時の心理が違います。後者の入居者は、「大家さんが確認した状態に戻す」という意識が自然に生まれやすい。

トラブルになりそうな箇所を事前に伝えられる——「ここの窓、以前から少し建て付けが悪くて。気になるようであれば連絡ください」と入居時に言えば、退去時に「壊れていた」と言われたとき「そうです、入居前からそうでした」と事実を確認できる。

入居時の立会いを自分でやる時間がない場合は、入居立会い代行サービスを使う選択肢もあります。原状回復・退去立会いを専門に扱う業者に依頼すれば、記録の取り方も含めてプロに任せられます。

敷金トラブルのほとんどは「記録の問題」

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復の費用負担の考え方を明確にしています。

ガイドラインの基本的な考え方は、通常使用・自然劣化による損耗は貸主負担、入居者の故意・過失による損耗は借主負担というものです。ここに異論のある人は少ない。

問題は「どちらの損耗か」が分からないことです。

入居前から床に傷があったのか、入居後についたのか。クロスの汚れは経年劣化なのか、タバコのヤニなのか。これが記録なしで判断できるケースは、実際にはほとんどありません。

証拠がなければ話し合いになり、話し合いは主張の強い方が有利になりやすい。「揉めたくないから」と妥協した大家が、後から「あのとき記録さえあれば」と思う——この繰り返しが、敷金トラブルの本質です。

日本住宅性能検査協会が認定する「敷金診断士」の相談事例を見ると、トラブルの多くが「入居前の状態の記録なし」に起因しています。退去後に問題が出てから記録を作ることはできない。記録は入居時にしか作れません。

まとめ

敷金トラブルは退去時に起きるように見えて、実は入居時に仕込まれています。

入居前の状態を写真で記録する。チェックシートで入居者と情報を共有する。立会いで一緒に確認する——この3つを入居時に踏むだけで、退去時の「言った言わない」はほぼなくなります。

防ぐための工程は1時間もかかりません。トラブルになってから費やす時間と精神的なコストの方が、圧倒的に大きい。

Roomlyで入居時記録を残す

Roomlyでは入居時の部屋の状態を写真・コメントとともに記録できます。退去時に同じ物件の記録を引き出せるので、「あのときどうだったか」を確認するのに書類を漁る必要がありません。

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