Roomly
管理委託の判断

空港では、一番目立つ出口が一番遠い

管理会社管理委託比較意思決定

空港の設計には、直感に反する原則がある。

到着ロビーに出たとき、最初に目に入る出口は、実際の最短出口ではないことが多い。空港の動線設計では、商業エリアを通過させるために「視認性の高い出口」をあえて遠い位置に配置することがある。目立つから、人はそちらに向かう。近い出口は目立たないから、見過ごされる。

目に入りやすいものが、正解とは限らない。


管理会社を比較するとき、何を見ているか

管理会社を選ぶとき、比較に使われる指標がある。管理費のパーセンテージ。対応時間。管理戸数。口コミの評価。

これらは「測れる」指標だ。数字で比較できる。表にして並べられる。だから意思決定の材料として使いやすい。

ある大家が、管理費が月額賃料の5%だった管理会社から、3%の会社に乗り換えた。条件だけ見れば、2%の差は年間で数十万円の節約になる。合理的な判断に見える。

3ヶ月後、入居者から「前の管理会社の方が良かった」という声が上がり始めた。具体的に何が悪いかと聞くと、「なんとなく対応が雑」「前は電話したらすぐ繋がったのに」「修繕の連絡が遅い」という回答が返ってきた。

数字に表れない部分が変わっていた。


「測れるもの」が意思決定を支配する構造

行動経済学には「測定可能性バイアス」と呼ばれる傾向がある。

人間は、数値化できるものを過大評価し、数値化できないものを過小評価する。これは能力や知識の問題ではなく、認知の構造だ。比較可能な情報が目の前にあると、比較不能な情報は意思決定から脱落する。

管理費5%と3%は比較できる。「入居者との関係構築の質」は比較できない。だから管理費が意思決定を支配し、関係構築の質は「比較対象にならない」という理由で無視される。

これは管理会社選びに限らない。採用面接で「学歴」や「資格」が重視されるのは、それが最も重要な指標だからではなく、最も比較しやすい指標だからだ。面接官の間で「コミュニケーション能力」の評価が一致しないのは、それが測りにくいからであって、重要でないからではない。


管理費2%の差に含まれていたもの

冒頭の大家の話に戻ると、5%の管理会社と3%の管理会社の差は、管理費だけではなかった。

5%の会社には担当者が固定されていた。入居者は「何かあったら〇〇さんに電話する」という関係ができていた。3%の会社はコールセンター方式で、毎回違う人が出る。対応内容は同じでも、入居者の側の「安心感」が違う。

5%の会社は修繕業者との長い付き合いがあり、急な案件でも優先的に動いてもらえた。3%の会社は都度見積もりを取るので、対応は正確だが時間がかかる。

これらの差は、契約前の比較表には載らない。「担当者固定」「業者ネットワークの深さ」は数字にならない。だから比較の土俵に乗らず、管理費のパーセンテージだけが判断材料になった。


「見えやすいもの」への引力

空港の出口と管理会社の比較指標は、同じ構造を持っている。

目立つものに引き寄せられる。測れるものを基準にする。それは人間の認知の構造であって、判断力の問題ではない。

管理費が高いか安いかは、1分で比較できる。入居者との関係構築の質が高いか低いかは、半年住んでみないとわからない。この時間差が、判断を歪める。短時間で得られる情報が、長期間かけないと見えない情報を圧倒する。

空港で最初に見える出口に向かうのは、それが「一番近い」からではなく「一番見えた」からだ。管理費の安い会社を選ぶのは、それが「一番良い」からではなく「一番比べやすかった」からだ。

測れるものを測ることは悪いことではない。ただ、測れるものだけで判断しているとき、測れないものが意思決定から消えていることには、気づきにくい。

Roomlyで賃貸管理をもっとシンプルに

10区画まで無料。クレジットカード不要で、今すぐ始められます。

無料で始める

コメント

読み込み中...