Roomly
家賃滞納・督促

「来月まとめて払います」は、依存症の再発宣言に似ている

家賃滞納督促対応初動対応管理会社

「今月は事情があって。来月まとめて払いますから、今月だけ待ってもらえませんか」

依存症の回復プログラムに、「今日だけ」という例外を作らないという原則がある。

アルコール依存症の治療でよく知られるこの原則は、「禁酒できているのに今日だけ」が次の「今日だけ」を正当化する、という認知の構造に基づいている。誕生日だから、つらいことがあったから、一杯だけなら——例外を一度認めると、次の例外を求める心理的ハードルが下がる。前例が、次の前例の根拠になる。

「来月まとめて払います」は、この構造の入口に似ている。


例外が例外を作る

「今月だけ待ってください」に応じた翌月、入居者の頭の中に何が起きているか。

「前回も待ってもらえた」という前例がある。これは「次も待ってもらえるかもしれない」という期待を生む。同時に「一度猶予をもらった」という履歴が「もう一度お願いするくらいは」という判断を後押しする。

これは意図的な計算ではないことが多い。「また払えなかった」という状況が先にあり、「あのときも大丈夫だったから」という判断が後からついてくる。悪意ではなく、前例が作った認知の地図の上を歩いているだけだ。

依存症研究者たちは「一度の例外が次の例外を可能にする」この過程を「許可の連鎖」と呼ぶ。管理会社は「また来た」と思う。入居者は「また頼んでしまった」と思っている。どちらも本当のことを言っているが、そのループの起点は「最初に作った例外」だ。


優しさが構造を作る

「今月だけ」を認めることは、担当者の立場からすれば「相手を追い詰めたくない」という誠実な動機から来る。

これは優しさだ。でも依存症の治療で「今日だけ飲んでいい」と言わないのは、患者を突き放しているからではない。「今回だけ」が次の「今回だけ」を作ることを知っているからだ。

優しさと、構造の設計は別の問いだ。「今どうするか」と「その判断が何を作るか」は、時間軸が違う。今月の優しさが、3ヶ月後のループを作ることがある。


ループに入ってから修正する難しさ

「来月まとめて払います」が2回、3回と続いた段階で、状況の性質が変わっている。

「やはり通常の支払いに戻してください」と言うことは、最初の段階で言うより難しくなる。入居者の側に「今まで待ってもらえていたのに」という感覚が生まれているからだ。前例が積み上がるほど、例外の要求は「お願い」ではなく「既成事実への反抗」の色を帯びていく。

依存症の再発も、初回の逸脱より2回目、3回目の方が食い止めにくい。最初の例外が最も小さく、最も止めやすい。でも最初の例外は、まだ問題が起きていないように見える段階にある。

「来月まとめて払います」という言葉は、それ自体は事実の申告だ。その言葉に対して「今回だけ」と応じた瞬間から、ループの地図が描かれ始める。


「今回だけ」が最も安い

依存症の回復プログラムが「今日だけ」を許さない理由は、禁欲主義や厳しさではない。

「今回だけ」という例外の単価は、初回が最も安い。2回目は最初の前例があるから、止めるコストが上がる。3回目はさらに上がる。累積するにつれて、例外は「例外」ではなく「標準」になっていく。

「来月まとめて払います」と言われたとき、最も安い選択肢は「今回だけ」ではなく、「日付と金額を具体的に約束してもらうこと」だ。「来月払います」は意向で、「〇月〇日に〇万円」は約束だ。この差は、例外の性質を変える。例外として扱うのではなく、合意として扱う。

最初の例外が、最後まで効いてくる。これは滞納の話であり、依存症の話でもある。同じ構造が、まったく違う文脈で同じ形をとっている。

Roomlyで賃貸管理をもっとシンプルに

10区画まで無料。クレジットカード不要で、今すぐ始められます。

無料で始める

コメント

読み込み中...