結露のカビは、誰の責任にもしづらい
冬が来ると、窓際が濡れます。そして春になると、そこにカビが出ます。
退去のときに、このカビが問題になります。壁紙の張り替え費用を誰が持つのか。入居者は「建物の問題だ」と言い、貸す側は「換気していなかったのでは」と考える。
どちらの言い分にも根拠があるので、話がまとまりません。
原因が単独では決まらない
結露は、空気中の水分が冷たい面で水に戻る現象です。発生するには、水分と、冷たい面の両方が要ります。
冷たい面のほうは建物の性能です。断熱が弱い、単板ガラスの窓、北側の外壁に面した部屋。ここは住み方では変えられません。
水分のほうは生活から出ます。調理、入浴、洗濯物の室内干し、人の呼気。冬に窓を開けない生活をすれば、室内の湿度は上がります。
つまり、建物側と生活側の両方が揃って初めて起きる。片方だけを取り出して「こちらが原因だ」と言えない構造になっています。だから議論が平行線になる。
ガイドラインは、程度の話をしている
原状回復の考え方では、通常の使用によって生じた劣化は貸す側の負担とされています。一方で、入居者の手入れ不足によって拡大した損耗は、入居者側の負担になりうる。
結露によるカビは、この境界線上にあります。結露そのものが建物の構造に起因していても、発生したカビを長期間放置して拡大させた場合、その拡大分については入居者の責任が問われることがあります。
ここで争点になるのが「放置していたかどうか」です。そして、これを後から証明するのは、どちらの側にとってもほぼ不可能です。
退去の日に壁を見ても、そのカビがいつからあったのか、入居者が何をしていたのかはわかりません。
証明できないから、記録で先回りする
証明できない以上、後から争っても消耗するだけです。現実的なのは、争点になる前に情報を残しておくことだと思います。
入居時の状態を記録しておく。これは敷金トラブルの9割は「入居時」に原因があるで書いたとおりですが、結露に関してはもう一段あります。
入居中に結露やカビの相談があったかどうか、あった場合に何を案内したか。この記録が効きます。
相談があって、換気や除湿の方法を案内していた。それでも改善せず、こちらで対応した。この経緯が残っていれば、建物側の問題として扱いやすくなる。
逆に、相談が一度もないまま退去時に広範囲のカビが出てきた場合、放置されていた可能性の話になります。ただし、これも「連絡しにくかっただけ」の可能性が残るので、決定打にはなりません。
やり取りの記録が契約や部屋に紐づいて残っていれば、退去時に経緯を追えます。Roomlyのような管理システムで問い合わせ履歴が部屋単位で残っていれば、「いつ、何の相談があって、どう対応したか」を見に行けます。記憶と口頭の応酬にならずに済む。
責任の切り分けより、発生を減らすほうが安い
もっとも、揉めない最善の方法は、そもそもカビを出さないことです。
構造側でできることは限られますが、まったくないわけではありません。換気扇の能力が落ちていないか、給気口が塞がれていないか、窓のパッキンが劣化していないか。このあたりは点検で拾えます。
住み方の側は、案内するしかありません。ただ、入居時に一度説明しても、冬までには忘れられています。冬の手前にもう一度、短く伝えるほうが届きます。
「窓の結露は拭き取ってください、カビが出たら早めに連絡してください」。この程度の内容でも、連絡があるかどうかが変わります。連絡があれば対応できるし、対応した記録が残る。
揉めるのは春、仕込むのは秋
結露のトラブルが表面化するのは、春の退去のときです。でもその時点では、もう何も変えられません。
できることは、冬が始まる前にあります。点検を入れるか、案内を出すか、記録の取り方を決めておくか。
責任の所在がはっきりしない問題ほど、後から詰めるより、前に手を打ったほうが安く済みます。